5万円という低価格が受け、今年初めから驚異的な成長を遂げたミニノートパソコン(PC)市場は、ここにきて一気に3万円台の攻防に突入した。低価格を武器に海外メーカーが勢力を伸ばす一方、日本メーカーは苦戦を強いられている。はたして日本メーカーは、牙城を守ることができるのか。

 液晶画面8.9インチが3万円台、12.1インチが5万円台――。

 米デルのミニノートPCの価格である。値下げ競争は新次元に突入している。

 口火を切ったのは、世界シェア1位の米ヒューレット・パッカード(HP)だった。10月下旬、6月に投入したばかりの製品を約1万5000円値下げして4万4730円にしたのだ。ライバルもすかさず追随する。

 デルは9月に発売したモデルを同じく1万5000円程度値下げし、最安値のモデルを3万4980円とした。台湾エイサーも、12月に入って5000円値下げして4万9800円にした。都内の大手量販店では、台湾ASUS(アスース)の7インチのモデルが2万9800円で売られている。

 ここにきて値下げに拍車がかかっているのは、ミニノートPC市場への参入が相次ぎ、競争が激化しているからだ。2008年1月にASUSが投入した製品が大ヒットし、HP、エイサー、デル、東芝、NEC、中国レノボなど主要メーカーがこぞって参入した。

 製品の差別化がしにくいことも値下げ加速の一因となっている。そもそもミニノートPCは、ノートPCやスマートフォン市場の隙間を狙った製品だけに、5万円という価格帯に収まるように性能や機能を絞らざるをえない。加えて、コスト削減のため、各社とも台湾のODM(他社ブランド製品の開発・製造)メーカーに製造を委託している。それゆえに、外見こそ異なるが、中身はほとんど同じ製品になってしまう。結局、値段で勝負するしかない。

ミニノートPCが平均価格を押し下げ さらに、供給過剰による液晶パネルやメモリの価格下落と、円高による部品や製品の輸入価格の実質低下が、値下げ競争の背中を押している。グラフで示したように、08年1月時点で約6万3000円だったミニノートPCの平均単価は、11月には約4万8000円まで下落している。