会社は通勤費と歩合給の返還を求めたが
当人は返還拒否!その言い分とは?

 翌日、深田の報告を聞いた所長は、「浅井に確認しなくてはいけない」と思い、浅井を別室に呼び出した。まずは歩合給の計算ミスについて謝罪し、その後、引っ越しているのかを確認すると、1年半ほど前から引っ越していたと、浅井はあっさりと認めた。そうなると、1ヵ月にもらう5万円以上の定期代をそのままもらっていたことになる。

「定期代は不正受給になるから返還してもらう。歩合給についても、経理担当が計算ミスをしていたとしても、本来支給すべきでないお金だ。本社では、賞与支給時に調整すると言っている」

 所長がこう告げると、普段はおとなしい浅井が声を大きくして反論した。

「歩合給の計算は、経理のミスですよね?私のせいでもないのに、なぜ返す必要があるんですか?」

 さらに浅井は続けて言った。

「定期代も返還なんておかしいですよね?会社は確認していないんだから会社側のミスですよ!」

 所長は浅井が大きな声を出したことに驚いたが、冷静沈着に説明した。

「歩合給については、確かに君の不満も理解できるが、本来はもらえないお金だ。それに定期代については、明らかに届け出なかった君の責任だ。不正受給とされても言い訳できないぞ」

本社が意見聴取の場を開くと態度が豹変
人事も所長も呆れさせた本人の言い分

 定期代と歩合給に関し、浅井は「返還には応じない!会社のミスと確認不足だ!」と主張を譲らないため、本社はこれらを問題視し、懲戒処分を科す前の意見聴取の場を開くことになった。

「浅井さんの今回の件は、就業規則に則って、懲戒処分対象となります」

 本社の人事担当者が言い渡すと、浅井は慌ててこう反論した。

「実は1年半ほど前から、元社員の近藤さんと一緒に暮らしていました。彼女から『一緒に住んでいることを会社に知られたくないから』と言われ、引っ越したことを報告せずに定期代を受け取ってしまいました」

 人事担当者がメモを取りながら、「定期代については、不正をしている認識はあったのですか?」と尋ねると、浅井は動揺した。

「不正しているとまでは考えたことがありませんでした。そんな大げさな…」
「そうですか…。では歩合給についてです。調べると確かに近藤さんのミスですが、浅井さんは気づかなかったのですか?」