カルロス・ゴーン氏が失脚する引き金の一つとなった建物が、レバノンの首都ベイルートにある。高級住宅街にあるローズピンク色の邸宅だ。邸宅内の壁には、自動車業界の巨人と言われたゴーン氏の肖像が飾られていた。複数の関係者によれば、1500万ドル(約17億円)の費用を要したこの住宅の購入と改築は、ゴーン夫妻が個人的に指示していた。ワインセラーへと続くガラス張りの床の下には、改築の際に出土した古代の石棺が見えている。日産自動車の一部幹部らは今年に入り、ゴーン氏に気付かれないよう極秘に調査を行い、ベイルートの邸宅を含む複数の不動産が日産の資金で購入されていたことを突き止めた。不動産購入は複数のペーパーカンパニーを通じて行われていたという。事情に詳しい関係筋によれば、ベイルートの邸宅の改築費用も日産が負担していた。1999年からゴーン氏に率いられてきた日産だが、仏ルノーとの関係は難しさを増していた。