宅配便の荷物を置く配達員写真はイメージです Photo:PIXTA

「顧客満足を上げればコストが増える」。多くの企業がそう考える。実際、宅配業界では再配達が増えるほど利益は削られ、ECでは品揃えを増やすほど在庫負担が重くなる。だが、ヤマト運輸やアマゾンは、この“両立できないはずの問題”を逆転の発想で突破してきた。※本稿は、経営学者の山田英夫『トレード・オン思考 トレード・オフを乗り越える「第3の道」』(KADOKAWA)の一部を抜粋・編集したものです。

再配達という“宿命”を
ウィン-ウィンに変えたヤマト運輸

 ヤマト運輸は、1976年に宅配便事業に進出し、以来宅配便業界のリーダー企業である。しかし、1つの悩みがあった。それは、不在による再配達が多いことであった(ちなみに2017年では、不在で再配達になった比率は、大手宅配事業者3社で15.5%となっており、これがヤマト運輸の収益を圧迫していた)。

 届け先が不在であると、不在票を入れ、いったん配送所に持ち帰り、再配達に行くため、倍以上のコストがかかっていた。再配達しても追加収入(例えば、再配達料)が得られるわけではなく、利益率が低下する原因でもあった。

 何度も配達すれば、届けられる確率は高まり、顧客満足も高まるが、ヤマト運輸のコストは増える。まさに、顧客満足とコストのトレード・オフに直面していたのである。

 こうしたトレード・オフに対してヤマト運輸が用意した解決策が、配達の時間指定であった。1998年にこのサービスを開始した。例えば、旅先から自宅に荷物を送る場合、受け取る時刻を指定することによって、顧客は確実に受け取れる上、ヤマト運輸の配達も1回で済む。