トラウマ抱えた「物言えぬリーダー」が工場改革を断行できた2つの原体験 住友ゴム工業の工場では活溌な議論が繰り広げられてる 

かつて生産性ナンバーワンだった日本の製造業を中心とする企業が、なぜ世界の後塵を拝するようになってしまったのか。DOL特集『ルポ 闘う職場~働き方改革では生産性は上がらない』では、日本企業を覆う「仕事力損壊」の実態を浮き彫りにしつつ、そこからの脱却を目指す企業人たちの悪戦苦闘のドラマをリポートしていく。4回目は、住友ゴム工業で、トラウマを抱えていた「物言えぬリーダー」がある体験を通して変わり、工場改革を果たすに至った姿を追った。(ライター 根本直樹)

悔恨と決意
リーダーに何があったのか

 2年前、住友ゴム工業の元上文信は、悔恨の念と「今度こそは」という痛切な決意を胸に、ここ白河工場に製造第4課の課長として赴任してきた。4課は、大型乗用車やライトトラックのタイヤ製造を担当する部署で、彼は約300人の課員を率いるリーダーとなった。

 悔恨──。そこに話が及ぶと、温厚そうな元上の顔に一瞬、深刻の色が浮かんだ。一言一言、かみしめるように、元上は話す。