伝統的な人事体系を固持する銀行業界にあって、みずほは人事改革でも注目を集めている。34歳支店長も誕生するなど、動きの早い時代にマッチした改革の内容とは?
みずほは年功序列を止めた
リーダーを若い頃から育てる
今年4月、玉川学園前支店に34歳の支店長が着任した。みずほ史上、最年少の支店長で、ほかの金融機関からも驚きの声が上がったようだ。
銀行業界以外では、30代の幹部なんていくらでもいる。同じ金融業界の中でも、証券会社では若い幹部も珍しくない。しかし、銀行に関して言えば、いまだに伝統的な年功序列の人事体系が維持されてきた。
従来、銀行の支店長は若くても入行20年目くらいの40歳代にならないと登用されなかった。みずほも数年前までは44、45歳くらいが最年少支店長だった。その後、50歳前後になると更にマネジメントを担う人材が選抜されていくというのが、従来の銀行の一般的なスタイルだった。
しかし、このスタイルでは、変化の激しい時代に本当の意味でのリーダー育成はできない。一方で、ただ若手を登用すればそれで良いというものでもない。若手の登用と同時にシニア層の活用や優秀人材の長在化も進めるほか、一定の年次になったらリーダーを「選ぶ」という従来の選抜スタイルから、変化の激しい時代に組織を牽引し得るリーダーを組織として意識して「育てる」という方向に思い切って舵を切っていかないと、総合的に組織力を高めていくことはできない。
現代は、金融とテクノロジーを融合した、いわゆる「フィンテック」が加速度的に進化していくような時代だ。金融機関のトップが考えるべき課題は複雑多岐にわたる。従来のような硬直的ともいえるリーダーの選び方では、世の中や競争環境の変化のスピードに到底ついていけないのではないか。そうであるならば、組織を率いていくリーダーを、一定の段階で同じような母集団から「選ぶ」のではなく、様々な特性を持ったやる気に満ち溢れた人材を「若い頃から育てる」というやり方に変えていかなければならない、と考えた。
私がリーダーに求める要件の1つに「相手に対するエンパシー(共感)を持ち、想像力を持って接する事ができる」というものがある。これからの時代、単に金融のプロというだけではリーダーに相応しいとはいえない。みずほはグループ全体で8万人を抱える巨大な金融グループであり、お客さまはもちろんだが、社内の人間も、グローバル化や金融ニーズの多様化・複雑化によって、さまざまなバックグラウンドを持つ人間が集まっている。どんな人ともエンパシーを持って対話できる力は、リーダーに必須のものなのだ。