かつて生産性ナンバーワンだった日本の製造業を中心とする企業が、なぜ世界の後塵を拝するようになってしまったのか。DOL特集『ルポ 闘う職場~働き方改革では生産性は上がらない』では、日本企業を覆う「仕事力損壊」の実態を浮き彫りにしつつ、そこからの脱却を目指す企業人たちの悪戦苦闘のドラマをリポートしていく。
登場するのは全て組織革新研究会(組革研)への参加企業。一般にはあまり知られていないが、大手企業の間では「企業人育成の救世主」として知られる、独自のメソッドを持つ研究会。創設は1971年。メソッドの実践を通じて学ぶ「キャンパス」の会期は5日間、年に9回開かれている。これまでの参加企業は約2300社、参加者は5万人を優に超える。参加者たちはキャンパス受講後、その考え方を持ち帰って実践、多くの企業が業績を向上させている。(ライター 根本直樹)
若手社員の指示待ち体質に
あぜんとさせられたリーダー
今から1年ほど前、三井E&Sマシナリー(旧三井造船)大分工場の海外生産推進室の責任者となった辻省悟室長(51歳)は、自部署他部署問わず若手社員たちの仕事への姿勢があまりにも受け身で、指示待ち体質なのに愕然とした。技術者でありながら専門書をひもとくこともせず、分からないことは何でも安易にネット頼み。それでも分からなければ、職場の誰かが教えてくれるものと思い込んでいるような態度だったからだ。