ソフトバンクIPOで初値が公募価格割れ
相次ぐ向かい風と手厳しい市場の評価
ソフトバンクが歴代で最大級のIPOを行ったが、初値は公募価格割れという残念な結果に終わった。
タイミングも悪かったのであろう。このところ、ソフトバンク自身の問題だけではない事件に足をすくわれることが多く、「ついていない」としか言えない状況が続いている。
親会社であるソフトバンクグループの孫正義会長と関係が深いとされる、サウジアラビアのムハンマド皇太子のスキャンダルで、リヤドの経済フォーラムでの孫会長の講演は取り止めとなった。また、ソフトバンクが日本で唯一携帯電話網の基地局設備に採用し、5G開発でも手を組んでいるファーウェイへの風当たりが強まっている。さらには、先日のエリクソン製設備の不具合によるソフトバンク携帯電話の大規模通信障害の影響で、足もとでは契約解除件数が急増している。
今回のIPOに対するメディアの論調も、手厳しいものが多い。しかし、ここでちょっと立ち止まって考えてみてほしい。そもそもソフトバンク(ソフトバンクグループ)と孫正義会長に対して、日本人の評価は手厳しすぎるのではないだろうか。
ソフトバンクは1980年代、当時まだPCがマイコンと言われていた時代に、PCソフトの流通やパソコン雑誌の出版といった事業からスタートしている。それまで一部のマニアが自分でプログラミングするしか使いようのなかったPCを、パッケージソフトを購入して誰でも使えるものにし、第一次パソコンブームを牽引した点で、ソフトバンクの功績は大きい。
当時のソフトバンクが創刊した『Oh!PC』『Oh!MZ』などの機種別PC雑誌は、機種ごとに使い勝手の異なっていた当時のPCを使いこなすために、お世話になった入門者も多かっただろう。
その後、1990年代に入ってヤフーの日本におけるサービスを開始、2000年代にはYahoo!BBによるADSL接続を実現しインターネットプロバイダ事業にも参入し、インターネットの普及に貢献した。駅前で「Yahoo!BBでーす!」と言ってADSLモデムを配っていた販売員の姿を、覚えている人も多いだろう。「機器代金ゼロ円」のリカーリングビジネスの先駆けとも言える。