Photo:Toyokeizai/Aflo

 情報革命の時代において、発想法を学ぶべき優れたビジネスリーダーとして、最初に取り上げたいのがソフトバンクの孫正義氏だ。「意思を持つことで脳は進化する」と自ら語るように、自分の器を超える挑戦を自らに課すことで、驚異的な発想法を体得してきた人物といえる。

 孫さんに関してまず驚かされるのは、19歳の時に「人生50年計画」を打ち立て、現在までのところそれを着実に実行してきていることだ。この50年計画の中身が半端ではない。「20代で名乗りを上げ、30代で軍資金を1000億円貯め、40代でひと勝負し、50代で事業を完成させ、60代で事業を後継者に引き継ぐ」。

 20代で名乗りを上げるところまでは誰にもできるが、「30代で軍資金を1000億円貯め」といった瞬間から、雲をつかむような話になってしまう。こうした、自分の器をはるかに超えた挑戦の繰り返しが、孫さんの脳を進化させてきたのである。

 ところで、孫さんはなぜ自分の会社を「ソフトバンク」と名づけたのか、あなたはご存じだろうか。それは、最初パソコンソフトの卸売業から会社をスタートさせたからである。

 当時まだ1980年代の初め頃で、シャープやNECの個人向けパソコンが世に出始めた頃であった。当初はマニアが自分でプログラミングをして楽しんでいたのだが、次第にパソコン用のソフトウェアに対する需要が高まっていく。

 その頃、パソコンソフトの最大手メーカーはハドソンという会社で、上新電機などの大手家電量販店を通じて、パソコンユーザー向けに販売が行われていた。孫さんは、パソコンソフトの将来性に着目し、メーカーと小売店を仲介する卸売業に参入したのだ。

 ここで、孫さんは短期間のうちに事業の立ち上げに成功し、一時は市場シェアの8割を奪取するに至っている。それがなぜ可能になったのか、皆さんにもエクササイズを通じて考えてもらおう。起業家としてスタートした当時の孫さんになったつもりで、次の問いに取り組んでみてほしい。

【エクササイズ】
Q:あなたがソフトバンクを起業した当時の孫さんだったとして、どのようにパソコンソフトの卸売業を成功させるか考えてみてください。
(ヒント)成功した状態を定義できれば、答えは自ずから浮かび上がってきます。

 さて、いいアイデアは出てきただろうか。