更年期は心身の急激な変化に戸惑うことが多く、ただでさえ心が揺らぎやすい時期。軽口のつもりで言った一言が、女性を深く傷つけてしまうこともある。「女じゃなくなった」は、「太った」よりも「老けた」よりもダメ。だって、閉経したところで女性は女性。そこになんら変わりはないのだから。

 さて、話を戻そう。

 更年期の症状が軽く、これまでと変わりなく生活を送れる人は、家族に症状を詳しく話さなくとも問題はないかもしれない。けれど<更年期障害>の場合には家族の理解と助言、そして迅速な行動が重要になる。なぜなら、重い更年期障害になると、自分では何をどうすべきか的確な判断ができなくなってしまうことが多いからだ。そういうときに夫やパートナーにほんの少しでも知識があれば、大切な人を絶望の淵から救い出すことができるかもしれない。

 過去に取材をした例を挙げてみたい。

「私、更年期かな」の一言から
妻をどん底から救い出した夫

 専業主婦のNさん(44歳)に更年期のうつ症状が出始めたのは43歳のとき。料理が得意でキッチンが大好きな場所だった。それなのに、「何かをする気力もなく、インスタントラーメンでさえ作るのがおっくうに。子どもを幼稚園に送った後は、床に倒れ込みそのまま寝てしまう」ようになってしまう。部屋は散らかり放題、友人との連絡も絶つように。自分がおかしいことはよくわかっていた。「このままじゃいけない。離婚の話が出ても仕方ない」、そう思うものの、すべてが面倒で体は動かず気持ちは沈む一方だった。

「私は頭がおかしくなってしまったの?」そんな思いにさいなまれていたとき、夫にふっと漏らした言葉がある。「私、更年期かな」……年齢的にはまだ少し早い。深く考えて口にした言葉ではなかったが、瞬時に反応したのがNさんの夫であるYさん(44歳)だった。

 実はNさんは若い頃からPMS(月経前症候群)に悩まされており、夫であるYさんにもそのことを話していた。Yさんは当時、その言葉の意味をまったく知らなかったが「自分の妻のことだから」とネットや本を買って勉強。「女性にはホルモンの影響を受けやすい人がいるんだ」と学んだ。

 様子がおかしい妻が「更年期かな」とつぶやいた一言。PMSの治療としてもらっていた抗うつ剤を、生理前でない時期にも飲むようになったことも心配でならなかった。