肝臓に中性脂肪が過剰にたまった状態が脂肪肝だ。多くの場合、自覚症状がないが、放っておくと慢性肝炎から肝硬変、肝臓ガンへと進む危険性がある。

 脂肪肝の患者数は近年急増しており、現在では推定で約3000万人、成人の3人に1人の割合に達しているといわれる。

 脂肪肝の三大原因といわれるのが、肥満、過度の飲酒、糖尿病だ。

 肥満や過度の飲酒は肝臓の分解・処理機能を低下させ、肝臓内に中性脂肪が蓄積しやすくなる。1日平均ビールで大瓶3本以上、日本酒で3合以上を飲む人には高率で脂肪肝が認められる。

 糖尿病はインスリンの働きが悪くなることが原因の一つだが、血糖値が高まると血液中に溢れた糖は肝臓にも大量に送られて、中性脂肪に変えられる。このため、糖尿病と脂肪肝は合併しやすい。

 最近では、アルコールを飲まないのに脂肪肝から肝硬変に至る例が激増しており、「NASH(ナッシュ)」(非アルコール性脂肪性肝炎)と呼ばれているが、脂肪肝の人の約一割にNASHが発症している。

 その原因などはまだ解明されていない部分も多いが、肥大化した脂肪細胞が出す悪玉の生理活性物質がインスリンの働きを低下させ、その悪影響が肝臓に出たのがNASHではないかとも考えられている。

 NASHは単なる脂肪肝より病気の進行が速く、治療に対する反応も鈍いといわれている。明らかな体重オーバーや飲酒の習慣がない人でもNASHになるので要注意だ。また、無理なダイエットで急激に体重を落とすのもNASHの原因になるとされている。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 田原寛 )