当時の反動なのか、その後、年齢を経るとともに外に出られなくなっていく。

 実家では、父親は「働け」「金を入れろ」としか言わなかった。相談しようとしても取り合わない。酒が入ると口論になり、父に包丁を向けられたことも何度かあった。ギリギリのところで生きてきた。

 母親からも、「近所の目があるから、仕事を探しなさい」と言われ、仕事を探そうと何度となくハローワークに行った。しかし、ハローワークが近づいてくると、具合が悪くなる。パニックになって行き詰まる。出かけるたびに「ああなるのでは」と思い、足が遠のいた。

 ずっと居場所を求めていた。この間、「怠けている」の1点だけで責められ、自分は本当に怠けているだけなのかな、と思い込んでいた。そういうつもりはないし、怠けとは違うと思っていたけど、そのことを相談する場も相手もなく、ズルズルと長引いてしまった。

「意見を言ってはいけない」
偏見から逃れ幸せを探求し始めた

 昨年12月、新聞で青森市で活動する「さくらの会」という引きこもり家族会を知った。「何か変わるきっかけがあれば……」と思って、遠くから参加した。

 県の担当者たちの前で、仲間たちと一緒に神さんもこれまでの思いや要望を言った。
 
「支援に変化があればいいなとの思いで、当事者である私たちが県の方々に発言した。当事者の声を聞かなければ、県も対策のしようがない。これからも、さくらの会で居場所づくりに協力して、声を色々な場で発信していきたい」

 意見を言ってはいけないという偏見に囚われ、これまで権利も行使できずに引きこもらされてきた当事者たちが、「働くよりも前に、自分らしく生きていくことが大事なんだ」という価値観に気づき、幸せへの探求を明言し始めた年でもあった。

 11月末、KHJ全国ひきこもり家族会連合会は、従来の家族会のあり方を変える「自分らしい生き方シンポジウム」を大阪市で開催。それぞれの生き方を実践している人たちが登壇し、「あなたが就労や自立に捉われず、生きる上で最も大切に思っていることは何ですか」というメッセージを発信した。同じ趣旨のシンポジウムは、2019年1月、東京でも十数人の実践者たちが参加して行われる。