中国はマラッカ海峡に代わる
貿易ルートを渇望している

 現状では、中国の海軍力は米海軍に遠く及ばず、もし米中開戦ともなれば秒殺されるでしょう。したがって、マラッカ海峡とは別のルートを開拓しておく必要があります。それが「北極海ルート」(中国沿岸部→東シナ海→日本海→津軽海峡→北太平洋→ベーリング海峡→北極海)です。

 地球温暖化の結果、プーチン政権はシベリアでの石油・天然ガス開発を急ピッチで進めています。また北極海の氷が溶けて、大型船が就航できるようにもなりました。北極海経由で欧州へ行けば、マラッカ海峡・スエズ運河経由よりはるかに日数を短縮できます。中国製品を欧州へ輸出し、地下資源をシベリアで買い付ければ、もはやマラッカ海峡に依存しなくて済むのです。

 この北極海ルートを利用するにあたり、中国船の寄港地として、戦略的価値が格段に高まってきたのが北海道なのです。

李克強首相が北海道を
視察した目的とは…

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米国はこの先衰退していくのか、ロシアや中国などの地域覇権国家はどのようにして力を持ったのか――。相手国の考え方や世界のルールを熟知すれば、近未来予測も可能になります!

 2018年5月に李克強首相が来日し、北海道を視察しました。その目的は第1に、北海道に投資して寄港地を確保すること、第2に北海道の農産物を買い付け、米国との経済戦争に備えることです。

 過疎化と景気低迷に悩む北海道の高橋はるみ知事は、諸手を挙げてこれを歓迎しました。しかし、中国の投資には必ず軍事的側面があることを忘れては行けません。「一帯一路」を掲げてインド洋諸国、スリランカやパキスタン、モルジブに莫大な投資を行ってきた中国は、その見返りとして中国海軍の寄港地を確保してきました。中国海軍が根室や釧路を基地にできれば、北極海航路を完全に掌握できるでしょう。

 プーチンのロシアにとっては「痛しかゆし」です。「シベリアの天然資源が売れるのは歓迎するが、中国海軍が北極海に進出するのは困る。中国を牽制するには、日本との関係強化が必要だ。だからアベに領土返還をチラつかせて日本からの投資を呼び込もう」という魂胆です。

 相手国の真意が見えていれば、戦争を回避し、妥協する余地も生まれます。地政学はそのための有力なツールなのです。