ターミナル駅前の大書店の店員が全員マスクをして対応している場面に遭遇した。声も聞こえない、表情もよくわからない。わが国を代表する書店のその対応は、日本の来客対応が変わりつつある兆しなのではないか。(モチベーションファクター代表取締役 山口 博)

旗艦店の受付担当が
そろってマスクで対応

声が聞こえにくいなど、マスク姿での接客には大きな問題点があります。マスク姿での接客は、声が聞こえにくくなる上に、にらんでいるようにも見えがち。これだったら、セルフレジにした方がいいくらいだ Photo:PIXTA

 その日のうちに必要な書籍があって、閉店間際に、大規模書店に飛び込んだ。東京都心のターミナル駅近くにある、同書店の旗艦店だ。かなり混雑している日中ほどではないが、それでも来店客はいる。

 数人の店員が次々とレジをこなす1階受付に行って驚いた。全員、下まぶたぎりぎりまで覆うような大きなマスクをしているのだ。マスクをしながら対応しているので、声がくぐもって、何を言っているのかよくわからない。マスクのあたりが動いているので、話しているようにも見えるが、もしかしたら、話していないのかもしれない。

 決して本人はそのようなつもりはないとは思うが、マスクをしていると、目が強調されて相手をにらんでいるように見える。それも、私より背の低い人だったので、上目遣いににらまれているように思えてしまう。

 正直、旗艦店1階のメインの受付カウンターで、その対応はないだろうと思いつつ、視線をそらすと、受付の他の店員も大きなマスクをしている。そして、その脇には、「ただいまマスクをしたまま業務を行っています」という意味の張り紙がされている。書店を挙げて、マスクをしたままの業務を奨励しているか、是認しているのだろうか。

 以前、昼間訪れた時には、それに気づかなかったので、少なくとも全員がマスクをしているということはなかったと思う。閉店間際の特別な措置だろうか。だとしても、営業時間中で来店客はまだまだいる。

 マスクひとつに何を目くじら立てているのかと思われるかもしれない。決して、その書店やその店員を個別に問題視しようとしているのではない。きっと、事情があるのだろう。しかし、マスクひとつといえども、世の中全体の来客対応の考え方が変わってきている兆しのように思えてならないのだ。