ロボティクスやセンシング技術の進化が
栽培管理ノウハウのスマート化を実現
「先端技術による作業の自動化」をスマート農業として再構築していく際の“鍵”になるのがICTやロボット技術の活用だ。社会実装に向けてすでに販売が始まっているものもある。
農機メーカー大手のクボタが試験販売を開始した「アグリロボトラクタ」は、自動走行トラクターだ。トラクターは無人で、畑を整地したり施肥、播種などを行う。アグリロボトラクタは、将来的には、作業者1人で複数台(最大5台)までのトラクターを操作でき、限られた作業期間のなかで1人当たりの作業可能面積を拡大して大規模化を支援する。このシステムは、農機具全般の自動運転技術としても活用が期待されている。
また、農研機構が開発を進め、19年以降の実用化が視野に入ってきたのが「自動運転田植機」だ。直進と旋回の大幅な速度アップを可能にする自動操舵システムを搭載しており、さらに衛星測量システムにより、自機の位置を数センチメートルの精度で把握できる。
これにより田植え作業と苗補給を1人でできるようになり、最高速度で植え付け作業を行っても熟練者並みの直進精度を得られるという。
ロボティクスは、各種ある農作業のなかでも最もきつく、最も時間を取られる草刈りへの応用も進んでいる。
産業技術総合研究所や太洋産業貿易などが20年以降の実用化を目指しているのが「無人草刈りロボット」だ。従来の乗用型草刈機の機能を絞り込み、本体価格が半額の50万円程度に納まるように開発を進めている。これまでの試行では、作業時間は5割以下に削減され、草刈りのコストは2割削減された。
センシング技術の活用も栽培管理の仕組みを大きく変えようとしている。
クボタケミックスが18年に先行販売を開始した「ほ場水管理システム」は、水田の水管理を遠隔かつ自動制御する。センシングデータや気象予測データなどを集約して分析。制御ソフトにより水管理を最適化するだけでなく省力化する。水管理労力を80%削減でき、気象条件に応じた最適な水管理で減収を抑制する。
同じく18年にサービスが始まったファームアイなどの「ほ場低層リモートセンシングに基づく可変施肥技術」は、ドローンに搭載したカメラで水稲の葉色のばらつきをマップにし、それに基づいて可変の施肥設計を練り、実施する。つまり必要最小限の肥料で最大の収量の確保と品質の向上を目指すものだ。