スマート農業への挑戦 その2
日本が挑む稲作の新地平

日本のコメ作りが変わろうとしている。ICTの力を導入して安全で安心な作業環境を創造し、大規模栽培の効率化や栽培管理の適正化を確保する。関東有数の穀倉地帯である茨城県南部に挑戦を訪ねた。

茨城のコメが米国でブレークしている

スマート農業への挑戦 その2日本が挑む稲作の新地平

 茨城県は、新潟県や北海道には及ばないものの宮城県や福島県と並ぶ年間35万トンのコメを生産している。生産量の順位では7位である(農林水産省「水陸稲の収穫量」2018年)。

 茨城県はコメの輸出、特に米国向けの輸出に力を注いでいる。16年に茨城県産米輸出推進協議会が設立され、現在は60人の生産者が結集。16年には60トンだった輸出数量を18年には430トンにまで増やしている。同協議会の会長であるライス&グリーン石島の石島和美社長は、「米国では茨城県産コメは、精米歩留まりが良く、胴割れが少ないことが評価され、『もっと回してほしい』との要望が絶えません」と語る。

スマート農業への挑戦 その2日本が挑む稲作の新地平ライス&グリーン石島
石島和美社長

 輸出されている茨城県産コメは、「ハイブリッドとうごう3号」「ほしじるし」「ゆめひたち」などの多収穫品種で、ミドルレンジのコメだ。つまり「多収穫品種を軸として、より収穫量を増やし、生産コストを削減できる体制ができれば、カリフォルニア産コシヒカリなど現地のおコメとの価格競争力も強まり、収益を拡大できます」(石島社長)。

 一方、石島社長自身がそうであるように、農業者の耕作規模の拡大が急ピッチで続いている。後継者がいない農業者の耕作地を行政が借り上げたり、買い取ったりして規模拡大に挑む農業者に提供するためだ。例えば石島社長自身も、下妻市の2ヘクタールほどの野菜農家の3代目だったが、現在は70ヘクタールのコメ生産者へと転換している。

 耕作地の拡大に合わせて、コメ栽培を知る人手を確保していくのは至難だ。「農業者としての競争力を強めるためには水田を増やしていかなければならない。しかし人手不足への対応と野放図なコスト増加を防ぐためには、省力化や自動化などの技術導入が不可欠です」(石島社長)。

スマート農業への挑戦 その2日本が挑む稲作の新地平スマート農業ではリモコンヘリも大活躍

 農林水産省の「スマート農業実証プロジェクト」の一つとして石島社長の水田を舞台に始まったのが「超低コスト輸出用米生産の実証」だ。主役となるのはロボットトラクター、密苗対応オート田植機、リモートセンシングによるドローンや農薬散布ヘリなどの機器たちだ。

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