初めての仕事は密入国ブローカー
“蛇頭”絡みの殺人事件

「知人の紹介ですね。試験とかはなくて面接のみ。そこでOKが出たら、警察に通訳士として登録するんです。あとは実力次第。現場の刑事さんに力を認められ、信頼関係ができれば、バンバン指名が入る。ホストやキャバ嬢と一緒ですよ(笑)」

 司法通訳の仕事はそんなに儲かるのか。

「当時、警察の場合、時給6000円でした。1日平均5~6時間仕事してたので日当3万~3万5000円になる。中でも一番おいしいのが、警察用語で“引き当たり”と呼ばれる実況見分に呼ばれたとき。容疑者を連れて朝の4時とか5時に現場へ向けて出発し、遠いところだと警察署に戻るのが深夜12時とか1時になりますからね」

 司法通訳になって最初の仕事は、中国人同士の殺人事件の取り調べだった。90年代の日中両国で猛威を振るっていた密入国ブローカー“蛇頭(スネークヘッド)”絡みの事件だった。

「福建省出身の貧しい中国人たちが、日本への密入国を手引きしてくれた蛇頭のボスとその愛人を拉致して、川崎のマンションに連れて行き、なぶり殺しにした事件です。当時はこんな事件、普通にありましたね」

 2000年代初頭以降、中国の経済発展にともない中国人の密入国は激減していったが、90年代の日本には漁船や船のコンテナなどに身を隠し、こっそり海を渡ってきた密航者が相当数いたと思われる。

 当時の新聞を開くと、コンテナにすし詰めになった中国人たちが、暑さや病気で大量に死んでいるのが発見されたり、密入国者による窃盗などの犯罪、蛇頭絡みの事件のニュースが頻繁に報じられていたことが分かる。それだけ日本と中国の間の経済格差が大きかったということだろう。周氏も言う。