WHOは、このような危機的な感染症など国際的な健康危機に対して、世界保健規則という決まりの中で、緊急事態宣言をすることができる。しかし、WHOには苦い経験があった。

 2009年、H1N1新型インフルエンザの流行がメキシコから始まり、日本でも神戸の学生が成田空港の近くで隔離された。この時、WHOは緊急事態を宣言し、旅行や貿易が制限された。

 結果的には、このインフルエンザは“通常のインフルエンザ”と病原性が同様だった。「WHOは緊急事態宣言をするべきではなかったのではないか」という声が欧州などから上がった。

 それ以後、WHOは緊急事態宣言には慎重になっている。2018年8月1日に宣言されたコンゴ民主共和国・北キブ州の10回目の流行についても、緊急事態宣言は出されていない。

 第2に、この地域における保健医療サービス提供の弱さである。

 この地域における長年の内戦・紛争のため、病院や医療従事者が少なく、普段から十分な医療が提供できない。そこに緊急のケアが必要なエボラという病気が発生し、十分な対応ができなかった。病院に行っても、医療従事者に感染症に対する知識、経験がなく、日本では当たり前の、手を洗ったりすることすらできていないことも大きな問題だった。シエラレオネやリベリアの人口1000人当たりの医師数は、アフリカ平均の10分の1、日本の100分の1である。

現地の埋葬の習慣も原因
診療所の襲撃という事態も

 第3に地域・コミュニティーでの埋葬の習慣である。

 中部アフリカも同じだが、この地域では埋葬は故郷で行い、遺族が患者の遺体を洗う習慣がある。埋葬時に遺体からの体液に触れて、エボラに感染した例も多く見られた。また、西アフリカでは、診療所の襲撃という通常では考えられないことが問題にもなった。

 なぜ診療所を襲撃するのであろう。