「平成」はサーズやマーズ、O157、鳥インフルエンザ(新型インフルエンザ)などの新しい感染症のほか、風疹などの過去の感染症も猛威をふるい、何かと感染症が話題となった。これら感染症について、感染症に詳しい国立国際医療研究センター病院副院長の大曲貴夫氏に聞いた。(医療ジャーナリスト 木原洋美)
サーズ流行のパニックが
世界の感染症対策を変えた
――平成の30年間は「感染症」が非常に注目された時代だったと感じています。「新興・再興感染症」という概念が生まれたのも平成ですよね。まずは、そのあたりの歴史を教えてください。
これまでになかった感染症を「新興感染症」、抑え込んだと思われていたものが再びはやりだし、問題になる可能性があるものを「再興感染症」と呼んでいます。これらがいろいろと議論されるようになったのは20年ほど前からです。その時代、一番問題になっていた新興感染症が「鳥インフルエンザ(H5N1)」(1997)でした。鳥から鳥に感染するだけでなく、鳥から人間にもうつり、重症化する事例があることも判明。人から人へと広がりやすくなったら「新型インフルエンザ」になるかもしれないという恐怖をみんなが持つようになり、研究や対策が進んだ、たぶんそれが皮きりだったと思います。
そうこうしているうちに、本当に世界を動かしたのが「サーズ(SARS、重症急性呼吸器症候群)(2003年)でした。
2002年11月、中国で原因不明の肺炎が集団発生し、原因が分からないまま感染が拡大していきました。台湾の症例を最後に、2003年7月にWHOによって終息宣言が出されましたが、32の地域と国にわたり8000人を超える症例が報告され、世界中がパニックになりました。日本でもパニックが起きましたね。