上海市黄浦区の不動産屋に張り出された住宅情報を見ると、1000万元台、2000万元台のマンションが目に付く。特別な仕様でも立地でもないごく普通の住宅だが、1億円はざら、2億円、3億円の高値がつくのだ。

 その不動産屋の前に、近隣居住者とおぼしき老人が立っていたので話かけた。この老人は最近、所有していた物件を680万元(約1億1000万円)でやっとの思いで売却したという。このエリアでの成約額といえば680万元がせいぜいなのだ。2000万元越えの “バブル物件”など簡単には売れはしない。

市内の不動産屋。上海市内の住宅価格は1000万元、2000万元と身の丈を超えて高額化する上海市内の住宅価格(2018年撮影)市内の不動産屋。上海市内の住宅価格は1000万元、2000万元と身の丈を超えて高額化する(2018年撮影) Photo by K. H.

 その売却で手にしたお金は何に投資したのかと聞いたら、「借金返済ですべて消えてなくなった」と上海なまりの中国語で明かした。金融機関のみならず、親戚や友人から借りまくって買ったまではよかったが、老人の手元には何も残らなかったのだ。

 インターネットでは「房奴」「車奴」など、「~奴」という言葉を見るようになった。住宅ローン、自動車ローン、カードローンを返せない個人が増えているのだ。中国人民銀行は2018年第3四半期末、クレジットカード支払いの不良債権(半年の遅延)額は880億元になったと発表した。2011年同期の106億元と比べると8倍以上の増加だ。

 高額な負債を負った生活者は急増する中、中国では今、「個人破産制度を設けよ」という声が高まっている。