高校以降の進学は障害者ならOK?
“ねじれ”を生む新たな問題

 生活保護の目的は、「最低生活保障」および「自立の助長」である。1950年、生活保護制度をつくった厚生官僚(当時)小山進次郎氏は、「自立の助長」とは、その人が人間である以上は必ずあるはずの可能性を発見し、助長育成し、能力にふさわしい状態で社会生活に適応できるようにすることだと考えていた。光さんの専門学校での学びは、小山氏の「自立の助長」そのものだ。

 しかし、今回の大阪府の裁決で「生活保護で専門学校へ」が認められたのは、光さんが障害者で働けないからだ。アルバイトが可能な健常者なら、「大学などに行けるのなら就労を」ということになるのが現在の制度だ。新たな“ねじれ”や“不公平感”が生まれたのかもしれない。

 元生活保護ケースワーカーの桜井啓太さん(名古屋市立大学准教授)は、こう語る。

「問うべきポイントは、『大学などに進学すると生活保護は打ち切り』という点だけでしょう。そもそも、大学などへの進学によって保護を打ち切る『世帯分離』の扱いがナンセンスなのです。もしも、働ける学生と働けない学生の“不公平感”が生じるのなら、働ける学生の場合も生活保護を打ち切らないように、制度を改善するきっかけにできないでしょうか」(桜井さん)

 生活保護問題に詳しい弁護士の小久保哲郎さんは、大阪府の裁決は、あくまで篠田さん親子に対して「世帯全体の自立助長について十分検討せず世帯分離したことが不当」という内容だと指摘する。現行制度の根拠に基づいて論理的な正しさを積み重ねると、少なくとも、働けない場合に大学などへの進学を認めない理由はなくなる。

「大学生などの世帯分離をする現行の運用を『正しい』とする立場に立っても、その理論的根拠が『稼働能力の不活用(=働けるのに働かない)』にある以上、障害などにより稼働能力のない子どもさんについては、現行通知の適用の前提を欠き、世帯分離すべきではないということになります」(小久保さん)

 それなら、すぐに「障害などで稼働能力のない子どもについては、大学や専門学校進学に伴う世帯分離をしない」という扱いを徹底する必要がある。厚労省は、その旨を全国に周知すべきだろう。

「ところが厚労省の見解は、『稼働能力の有無にかかわらず世帯分離すべし』というもので、論理的な一貫性や整合性がありません。『そこまでして生活保護世帯の大学などへの進学を妨害したいのか!?』という怒りを禁じ得ません」(小久保さん)