山口組の「善行」と「恐怖」に
複雑な神戸市民たち

 つまり、このまま山口組が菓子配りを通して一般市民の間に受け入れられることは、対立組織に属する者たちにとって、決して愉快なことではないのだ。

「そろそろ私らの業界も忙しくなるはずですから。それ(ハロウィーン)どころやなくなると思いますよ」

お菓子で子どもの心をつかむのは難しいことではないだけに、警察関係者には踏み込んだ具体策を求めたい

 山口組と袂を分かった組織の関係者のひとりが語るこの言葉が不気味に響く。

 さて、地域住民によると、かつて山口組では、このハロウィーンだけではなく、新年の餅つき大会に地域住民を招待、参加した子どもには現金1万円から3万円程度のお年玉が配られたこともあったという。

 こうした山口組と地域住民との関わりを、「絶対にいけない」と声高に叫ぶ市民が増える一方で、「阪神大震災での活躍」「インフルエンザ流行時、幼稚園にマスクを差し入れ」など、“山口組さん”の「善行」に思いをはせる市民がいるのもまた事実だ。

 かつて総本部近くに住んでいたという神戸生まれ・神戸育ちの70代女性は言う。

「一住民としてやっていることに、あんたら(マスコミ)が面白おかしく取り上げるからおかしなことになるんや。こんな取り上げ方をされると、地域の人と山口組さんの距離の取り方がおかしくなる。どちらにも余計な苦労を強いる。結局、誰も得してへん」

 地域住民、公教育――、どちらも一見、“山口組さん”に物分かりがいい。だが、そこには戦後から今日まで、市民を震え上がらせてきた「山口組」へのおびえも透けて見える。今こそ兵庫県警は、もっと踏み込んだ具体策を講じなければ、ますます“山口組さんのファン”が増えるばかりなのではないだろうか。