作物栽培の全工程を、スマート化する実証農場
スマート農業加速化実証プロジェクトは、次のようなイメージだ。
大規模水田だと、「耕起・整地」では自動走行トラクターを活用→「移植・直播」では自動運転田植機を活用→「水管理」では自動水管理システムが稼働→「栽培管理」ではドローンを活用したリモートセンシングで除草や施肥の計画を策定→「収穫」では収量センサー付きの自動運転コンバインを活用する。これとは別に経営管理には経営管理システムも活用する。
プロジェクトは、「大規模農業だけでなく中山間地の水田や果樹、施設園芸などでもデータを得たいので対象品目や地域などは制限しません」(松村課長)。
そのため落葉果樹の栽培であれば、次のようなイメージになる。
「経営と栽培管理」では生産プロセスやコスト管理などをデータで見える化する管理システムを使用→「摘果」では熟練農業者のノウハウを見える化して新規就農者が短期間で高度な栽培技術を修得できるようにする→「防除」では画像認識システムやGPSを搭載した自動走行車両により薬剤散布などの労力を削減する→「草生管理」ではリモコン式自動草刈り機の活用による安全で効率の良い除草を実現する→「収穫」ではアシストスーツによる果実運搬の軽労働化を図る、といった具合だ。
もちろん、一連の取り組みは農業者単独ではできない。プロジェクトでは、農業者と地方自治体、大学などの公的研究機関、企業などがコンソーシアムを形成して実証に取り組み、設備機器の導入費や試験研究費、研究員の人件費・旅費などを負担する。つまり従来は個別に開発を進めていた関係者を、農業者を軸とした実証農場に集結してもらうのだ。
コンソーシアムの組成や実証プロジェクトの推進計画の策定、データの収集などは農林水産省から事業を委託される国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が指導する。
2月4日にスマート実証農場(コンソーシアム)の公募を締め切り、3月中下旬までに採択先を決定する予定だ。1コンソーシアムの取り組みは2年間。松村課長は、「高齢化や国際競争の激化など日本農業に残された猶予は少なく、2年間で一挙に各種のデータを収集して実証し、社会実装への道標となるデータを得たい」と語る。