農林水産業イノベーション第6回・下
「先端技術×農業技術=スマート農業」の驚くべき現状と次なる課題

2019年春に開始。 スマート農業を加速化する「実証プロジェクト」

農林水産省

イノベーションの市場創造にまで踏み込んだ政府支援

 スマート農業加速化実証プロジェクトは、政府が支援する新技術開発や新産業育成策としては、かつてない側面を持った取り組みでもある。

 というのも新技術開発や新産業の育成を促す支援は、従来は技術開発そのものの支援にとどまり、具体的な市場開発にまで踏み込んではいなかった。所期の機能を実現できれば政府の支援はそこで終わり、具体的な市場開発は研究者や企業に任されていた。
 しかし実証プロジェクトは、開発された各種の技術を実際に活用できる機会を確保することで、それを市場創造に向けた出発点とさせる機能を持とうとしている。

 実証プロジェクトで得られたデータは、当事者や農研機構で分析・解析され、まずは実証農場における最適な技術体系づくり生かされるが、それは全国各地でスマート農業に取り組むための基礎データになる。それは同時に、開発メーカーなどが導入地にマッチした技術に改変するための基礎データにもなり、市場創造を促すことになるのである。

 農林水産省のスマート農業への取り組みは、18年に閣議決定された『未来投資戦略2018』などを大方針とし、先端技術の研究開発、技術実証、速やかな現場への普及までを総合的に推進することとしている。

 実証プロジェクトは、まさに、実用化・量産化の手前にある技術の社会実装を加速化し、市場創造へと結びつけるために一歩踏み出した政府支援となるものだ。

 スマート実証農場は、農業と先端技術が結びついたスマート農業が、本当に成果をあげられるのかを見る試金石だ。その成果は、日本の食の安全保障の将来も占うものになる。政府の一プロジェクトと見過ごすわけにはいかない。

●問い合わせ先
農林水産技術会議事務局 https://www.affrc.maff.go.jp/
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