スキー場
スキー場はなぜ「19歳無料」で復活できたのでしょうか Photo:PIXTA

「売れないから値下げしよう」。よく取りがちなこの価格戦略は、一時的に売れても、そのうち売れなくなるケースが少なくない。しかし「無料」にしたり、反対に「値上げ」したりすることで、むしろ儲かるという結果を招く価格戦略もある。マーケティング戦略をわかりやすく解説することに定評のあるベストセラー著者・永井孝尚さんの最新刊『なんで、その価格で売れちゃうの?』から一部を抜粋して、今回は「無料」の威力と「無料」でビジネスが成功した事例を紹介する。

無料になると、途端に
ユーザーが爆発的に増える仕組み

 行動経済学者のダン・アリエリーは、こんな実験をしている。

 高級チョコ(トリュフ)と普通のチョコ(ハーシー)を用意し、二つの実験をした。

【実験1】高級チョコを1個15円(相場より激安)、普通のチョコを1個1円で、学生に売ってみた。結果、学生は超お買い得な高級チョコを選んだ。高級チョコを買ったのは73%、普通のチョコを買ったのは27%だった。

【実験2】次にそれぞれ1円値下げし、高級チョコを14円、普通のチョコを0円にした。すると一転して、無料になった普通のチョコが圧倒的に人気になった。高級チョコを買ったのは31%、普通のチョコは69%だった(なお、米国での実験なので実際にはお金の単位は「セント」だが、わかりやすくするため「円」に変えている)。

ダン・アリエリーのチョコ実験

 人は買い物の時は、たとえ1円でも「お金に見合った価値なのか?」と考えてしまう。これを行動経済学で「出費の痛み」という。しかし無料になった途端、この「出費の痛み」は消える。その結果、人は悩まずに商品を手にし、使い始めるようになる。

 私たちの周りを見回すと、無料ビジネスは至る所にある。テレビやラジオも無料。グーグル検索やフェイスブックも無料。ひと頃流行った0円携帯電話もそうだ。クックパッドや食べログも無料。

「広告費で稼いでいるんだろうなぁ」とか「携帯電話は通信費で回収しているんだろうなぁ」と予想はつくが、わざわざ無料にするのは、人間の深層心理に根ざしているのだ。人は本能的に「何かを失う」ことを恐れている。そして有料の商品はお金を失う。