今、顧客減、会員減に悩んでいる企業は多い。中でも定額課金=サブスクリプションモデルで利益を上げている場合には、会員取得ばかりに目を向けて、離れてしまう顧客には、なかなか有効な手を打てない現状だ。
元WOWOWグループ初の女性取締役であり、顧客を引き留める「リテンションマーケティング」で実績を上げた大坂祐希枝氏が初の著書である『売上の8割を占める 優良顧客を逃さない方法 利益を伸ばすリテンションマーケティング入門』を発売。
この連載では、この著書から一部抜粋してご紹介する。

「無料で釣った人」には
打つ手がない

(※今までの話は「バックナンバー一覧」から、見ることが出来ます)

前回では、ついにWOWOWの「優良顧客の実態」をつかめた、という話をご紹介しました。

「解約は止められない」という固定観念が社内にある中で、実は顧客は引き留められることがわかり、そして辞めようとする顧客の本音から、WOWOWに加入し続けている「優良顧客」の姿が見えるようになってきたのです。

一方、この過程で、「どんな施策でも解約を止められない顧客」が存在することも明らかになりました。

WOWOWでは、「コミュニケーターによる解約受付時のリテンション」や、「顧客が興味を持ちそうな番組のDMなどによる紹介」「見たい番組を探しやすくするプログラムガイドの送付」などなど、さまざまな施策を試みました。

しかし、「無料期間が終わったからもうやめます」という人だけは、これで解約率が下げられるという打ち手が見つからなかったのです。

結局、無料に魅力を感じて入った人は、無料期間が終われば解約してしまうことが多く、そういう人にまた加入してもらうには再び無料施策で釣るしかないのです。

これは反対に考えれば、「無料で釣る」のを止めれば、短期で解約する人、解約防止が効かない人が減ることになり、解約防止策の効果も上がるということを意味します。
そもそも無料で釣るのは、「無料だから」「割引だから」と金額面だけでお得感を出してアピールする方法です。それではWOWOWの本質的な価値を認めていない人もムダに加入に誘導することになります。

大切なのは、WOWOWが見たい番組や好きなエンタテインメントを放送しているからといった、WOWOWの本質的な価値に目を向けてくれる人に誘導を集中させることが大切です。そのような顧客であれば、加入後に解約したいという申し出があったとしても、コミュニケーションの取り方によっては解約を翻意させることができます。