所得税率を最高70%へ引き上げ?米国で荒唐無稽な提案が賞賛される理由
年収1000万ドル以上の富裕層を対象に、所得税の最高税率を70%に引き上げるという提案が、米国で注目されている。現在の最高税率37%を一気に2倍近い水準へ引き上げようというのだ(写真はイメージです) Photo:PIXTA

年収1000万ドル以上の富裕層を対象に、所得税の最高税率を70%に引き上げる。こんな提案が、米国で注目されている。現在の最高税率は37%だが、これを一気に2倍近い水準へ引き上げようというのだから、大胆だ。(みずほ総合研究所欧米調査部長 安井明彦)

最高税率を2倍に引き上げ
民主党議員による異例の提案

 この提案をブチ上げたのは、民主党のアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員である。昨年11月の中間選挙で初めて当選し、史上最年少の女性下院議員となったオカシオコルテス議員は、その大胆な発言と行動力で米国政治に旋風を巻き起こしている。JFK(ジョン・F・ケネディ大統領)や、MLK(マーチン・ルーサー・キング・ジュニア牧師)といった民主党の伝説的な英雄に倣うかのように、名前の頭文字をとった「AOC」という表記も珍しくなくなった。

 興味深いのは、荒唐無稽に見える提案が、真剣に議論されている現実である。現在の米国は、増税論がもてはやされる局面とは言い難い。景気は減速が心配されており、それほど財政赤字への懸念も高くない。まして来年は、大統領選挙の年である。本来であれば、増税よりも「ばらまき型」の政策が好まれやすいはずだ。

 それにもかかわらず、70%税率の提案は米国を魅了している。メディアはこぞって提案を取り上げ、ニューヨーク市立大学大学院センターのポール・クルーグマン教授らのリベラル派の論客が、競うように賛意を表明している。保守派からの批判も強烈だが、提案への賛否を尋ねた世論調査では、わずかながら賛成(39%)が反対(34%)を上回る結果も出ている。

 賛同者に言わせれば、70%税率は荒唐無稽でもなんでもないという。学術的に証明されているのみならず、過去の経験すらある現実的な提案だというのだ。