(5)世の中全体がある行為を許容する一定の流れの中にあったため、適法であり、社会的にも許されるものとして行っていたが、その後不祥事化するケース

 過去においては違法行為でありながらも、慣行として暗に認められていたものが、のちに何かのきっかけから、問題行為として認識されるようになるケースである。昔だと価格カルテル等の独禁法に関する行為、最近だと偽装請負や違法残業などが相当する。

(6)ミスや間違などの失敗を公開せず隠蔽したことが問題視されるケース

 もともとは失敗であったものの、それを公表せず隠蔽したことで、社会から問題視されるケースである。たとえば個人情報を流出したことをすぐに公表せず批判を浴びる、品質不良があったのに隠していて指弾される、といった類だ。

 不祥事は、その定義からして難しい。重大な違法行為であってもあまり報道されず、人の記憶に残らなければ不祥事を起こしたと認識されない。一方で、本来は被害者でありながらも、その広報対応にミスをしたら不祥事を起こした悪い企業と認識されたりもする。監査協会の分類も、体系性が不足していると見る向きもあろうが、事の性質上、整理がたいへん難しく、苦労のあとがうかがわれる。

原因は「組織の劣化」から
「情報の流動化」まで諸説あり

 さて、不祥事にもさまざまな種類があることがお分かりいただけたと思う。では、昨今は、それらの事象がなぜ多発している(ように見える)のだろうか。ちまたでよくいわれる犯人候補は、主に次の5つである。それぞれの内容とそれに対する評価を述べたい。

(1)「組織の劣化」犯人説

【内容】日本企業は、正社員比率を減らし、従業員の長期継続的な能力開発に力を注がなくなった。従業員から勤労道徳は消え去り、会社や職場へのコミットメントも下がっている。組織の倫理観の劣化は著しく、品質向上やコストダウンのプレッシャーが強くなると、容易に問題行動を起こしてしまう。

【評価】私の知る限り、昔(昭和~平成はじめ)の企業人は公私の区別が極めていいかげんだった。コンプライアンスなどという言葉すらなかったから、業者との癒着は今よりも格段に多かったし、ハラスメントに関しては驚嘆するレベルだった。かつて組織がすぐれた倫理観を備えていたとはとても言えない。一方で、長期雇用を前提に安定した職場があり、実務に強い人は確実に生産されていた。それが不況期下の採用削減によりいびつな年齢構成となり、また外注や短期間の従業員が多くなったことで、技術の継承や改善力が弱くなってしまったのは事実だろう。その結果、ちょっとしたプレッシャーから、安易な逸脱行為につながっている可能性は否定できない。