モスバーガーが起こした28人食中毒事件が、驚くほど報道されていない。3年前、異物混入騒動で連日、ボコボコに叩かれたマクドナルドとは対照的である。このように、驚くような偏向報道は、政治やイデオロギーがらみだけでなく、企業報道の現場でも当然のように行われている。(ノンフィクションライター 窪田順生)

マクドナルドはボコボコだったのに…
モスの食中毒事件は静観!?

2015年、異物混入事件でボコボコに叩かれたマクドナルド
2015年、異物混入騒動でボコボコに叩かれ、株価もダウンしたマクドナルドに対して、驚くほどスルーされているモスの食中毒騒動。マスコミがここまで露骨に報道スタンスを変える理由はどこにあるのか? 写真:つのだよしお/アフロ

 4期連続の客数減で苦境が報じられるモスバーガーに、まるで追い討ちをかけるかのように「食中毒騒動」が起きてしまった。

 9月10日、長野県の「アリオ上田店」で4人が腸管出血性大腸菌「O121」に感染したと公表したかと思いきや、あれよあれよと被害者が増えていき、現在では、先月10日から23日の2週間弱の間に、関東甲信の19店舗を利用した中に、28人のO121感染者が確認されているという。

「O121」の感染者は下痢、腹痛、発熱に襲われ、重症化すると、激しい腹痛と血便を引き起こす「出血性大腸炎」を引き起こし、溶血性尿毒症症候群(HUS)を併発する恐れもある。5人の死者を出した「焼肉酒家えびす」の「O111」や、広く知られる「O157」と同様、抵抗力の弱い幼児や高齢者が感染した場合、最悪の事態を招くことも考えられる。

 運営元のモスフードサービスには、ぜひ1日も早い原因究明と、再発防止の徹底をお願いしたい。

 その一方で、個人的にはモス側の対応よりも気になってしまうのが、「マスコミの報道スタンス」だ。

 なぜかというと、かつてのマクドナルドの「異物混入騒動」の報じ方と比較すると、同じ「食の信頼」を損ねた事件かと驚いてしまうほど、あまりにも大きな「ギャップ」が存在するからだ。

 覚えている方も多いと思うが、2014年末から翌2015年にかけて、マクドナルドの全国の店舗で、チキンナゲットなどの商品に、ビニール片や人の歯などの異物混入が続発した騒動だ。発覚から2日後に役員が「謝罪会見」を催したが、マスコミからは、やれ態度が悪い、なぜ社長は出てこないとボコボコに叩かれ、株価もガクンと落ち込んだのはご存じの通りだ。

 ワイドショーでは評論家が「食の信頼を大きく損ねた」「消費者を舐めている」とプリプリ怒っていたが、実は消費者への「実害」はごく小さなものだった。福島・郡山の店舗で、サンデーというアイクリームを食べたお客さんが、混入したプラスチック片で口の中を切ったくらいで、腹を壊したとか、嘔吐したという、命に関わるような健康被害はなかったのである。