モスバーガーが起こした28人食中毒事件が、驚くほど報道されていない。3年前、異物混入騒動で連日、ボコボコに叩かれたマクドナルドとは対照的である。このように、驚くような偏向報道は、政治やイデオロギーがらみだけでなく、企業報道の現場でも当然のように行われている。(ノンフィクションライター 窪田順生)
マクドナルドはボコボコだったのに…
モスの食中毒事件は静観!?
4期連続の客数減で苦境が報じられるモスバーガーに、まるで追い討ちをかけるかのように「食中毒騒動」が起きてしまった。
9月10日、長野県の「アリオ上田店」で4人が腸管出血性大腸菌「O121」に感染したと公表したかと思いきや、あれよあれよと被害者が増えていき、現在では、先月10日から23日の2週間弱の間に、関東甲信の19店舗を利用した中に、28人のO121感染者が確認されているという。
「O121」の感染者は下痢、腹痛、発熱に襲われ、重症化すると、激しい腹痛と血便を引き起こす「出血性大腸炎」を引き起こし、溶血性尿毒症症候群(HUS)を併発する恐れもある。5人の死者を出した「焼肉酒家えびす」の「O111」や、広く知られる「O157」と同様、抵抗力の弱い幼児や高齢者が感染した場合、最悪の事態を招くことも考えられる。
運営元のモスフードサービスには、ぜひ1日も早い原因究明と、再発防止の徹底をお願いしたい。
その一方で、個人的にはモス側の対応よりも気になってしまうのが、「マスコミの報道スタンス」だ。
なぜかというと、かつてのマクドナルドの「異物混入騒動」の報じ方と比較すると、同じ「食の信頼」を損ねた事件かと驚いてしまうほど、あまりにも大きな「ギャップ」が存在するからだ。
覚えている方も多いと思うが、2014年末から翌2015年にかけて、マクドナルドの全国の店舗で、チキンナゲットなどの商品に、ビニール片や人の歯などの異物混入が続発した騒動だ。発覚から2日後に役員が「謝罪会見」を催したが、マスコミからは、やれ態度が悪い、なぜ社長は出てこないとボコボコに叩かれ、株価もガクンと落ち込んだのはご存じの通りだ。
ワイドショーでは評論家が「食の信頼を大きく損ねた」「消費者を舐めている」とプリプリ怒っていたが、実は消費者への「実害」はごく小さなものだった。福島・郡山の店舗で、サンデーというアイクリームを食べたお客さんが、混入したプラスチック片で口の中を切ったくらいで、腹を壊したとか、嘔吐したという、命に関わるような健康被害はなかったのである。