ソニーが瀕死のスマホ事業から決して撤退してはいけない理由
業績が回復した現在のソニーにとって、唯一残念なのが「Xperia」スマートフォンを中心とした赤字のモバイル事業だ。しかし、同社はスマホ事業からの撤退を考えてはいけない。

資金力のあるソニーが
クラウドファンディングを行う理由

 ソニーの新規事業創出プログラム「SAP」(シードアクセラレーションプログラム)によって事業化されたロボットトイの「toio」が、プレイステーションを販売するソニーインタラクティブエンタテインメント(SIE)から本格発売されるという。

 SAPによる事業化は、スマートウォッチの「wena wrist」やスマートロックの「Qrio」など、小粒だがエッジの効いた製品が登場している。これらの製品は社内の審査に通っただけでなく、最初にソニーが運営する「first flight」というクラウドファンディングサイトを通じて商品化されるという共通点がある。

 クラウドファンディングと言えば、ネット上で簡単に資金調達ができる、主にスタートアップ企業向けの資金調達方法だ。著者が教える早稲田大学ビジネススクールの学生は、JVCケンウッドの事例研究を通じて、資金力のある大企業の開発プロジェクトがクラウドファンディングを用いる主要な理由は、社内の資源動員の正当化にあるのではないかという仮説を、修士論文で展開している。

 資源動員とは、企業内で開発人員や資金を新規の開発プロジェクトに導入することであり、その正当化とは、社内で新規プロジェクトの必要性をいかに説得し、決裁権限のある上司の同意を得るかというプロセスである。

 ソニーのSAPはそもそも社長直轄のプロジェクトであり、社内でも厳しい審査を経ているため、改めて資源動員の正当化をクラウドファンディングで行う必要はないかもしれない。しかしソニーに限らず、既存の大きな成功体験のある事業にかかわる社員や管理職は、小粒の、しかも既存の事業とは全く異なる新規事業を軽視する傾向にある。

 これは日本に限らず、海外でもそうした傾向が見られることが、多くの研究によって指摘されている。SAPから創出される事業そのものは小さいかもしれないが、そこで生み出されるアイデアの多様性が広く社内に伝播することが、既存の大企業の活性化にも有効なのかもしれない。