フードトラック立ち上げ当初のフードトラック

「テクノロジー分野で新しいサービスを無駄なくスピーディーに立ち上げる際には、MVP(Minimum Viable Product:ミニマム・バイアブル・プロダクト)を意識します。最初から完璧なものを作ろうとせず、まずは顧客に価値を提供できる最小限の製品を作り、ユーザーからフィードバックをもらいながら、臨機応変に変えていく。人間が完璧でない以上、この方法はとても理にかなっていると思いますし、私たちはそれに倣ってレストランビジネスを組み立てていきました」

 MVPは、シリコンバレーで起業家の必読書といわれた『リーン・スタートアップ』でも紹介されている。ニューヨークのベンチャーキャピタルに勤務していた2人にとって、それは慣れ親しんだ考え方でもあり、2人はその経験を飲食ビジネスに応用した。

 アックス氏は1987年、ドイツ・ブレーメンの生まれだ。大学卒業後は就職先のベンチャーキャピタルで、投資やM&A、マーケティング分野での経験を積んだ。共同創業者のマーク・リュッテン氏は1991年、ドイツ・ハンブルクの生まれ。飛び級し、19歳で大学を卒業した秀才でもある。卒業後は投資会社が所有するeコマース事業の最高責任者を務めるなどしていた。

 2人は別々の会社に勤務していたが、約10年前、同じドイツ出身の友人としてニューヨークで知り合った。

フードトラックフードトラックは自分たちで色を塗ったりしていたという

「テクノロジーが社会を変えていくのを見るのは、おもしろかった。半面、こんな風にも思いました。eコマースの場合、顧客との接点はほとんどなく、あるとしたら、カスタマーサービスでクレームを受ける時だけ。ビジネスとしては魅力的だけれども、自分自身が情熱を持って取り組める事業かというとそうではありませんでした」とアックス氏は語る。ITとは正反対の飲食ビジネスに興味を持ったのは、幼い頃の体験が影響している。

「子どもの頃は、食品ビジネスを手がける父が所有する有機農場で育ちました。夏休みになると、祖母が経営するホテルでシェフの手伝いをしていました。シェフと一緒に釣りに行き、採れた魚をシェフが調理してお客さんに出していました。それはとても感動的な体験で、訪れる人たちの思い出作りに貢献できるホスピタリティビジネスっていいなと思いました」

 共同経営者のリュッテン氏はもともと、食べることが大好き。世界中、どこの都市へ行っても現地のタクシードライバーから情報を聞き出し、どのレストランが一番おいしいかを探るほどのグルメだという。

「マークも私も情熱を持って事業を成長させることに興味があり、もっと顧客と直接触れ合うビジネスがしたかった。考えてみたら、飲食業界にすばらしいレストラン、すばらしいシェフはたくさんいますが、僕らのようなバックグラウンドを持つ経営者はあまりいません。スタートアップを支援した経験を持って飲食業を始めたら、おもしろいことができるかもしれないと思いました」