また、中国、韓国、ロシアは、口を開けば「完全な非核化」と言うが、実際は非核化に強い関心はない。むしろ、北朝鮮が核を持ち続けた方が、都合がよかったりする。結局、北朝鮮の「完全な非核化」については、日本が「蚊帳の外」となり、「米国には決して届かない短距離・中距離の核ミサイルが日本に向けてズラリと並んだ状態でとりあえずの問題解決とする」(第166回)という状況が出現しつつあった。

 だが、マイク・ペンス米副大統領は2度目の米朝首脳会談で「金正恩委員長が約束した非核化を現実のものとするための具体的な措置について、私たちの考え方を示す」と述べ、首脳会談では非核化の具体的な措置を話し合うとの見通しを示している。なぜ「完全な非核化」をテーマにした首脳会談開催という流れができたのであろうか。

アメリカファーストと
合致する「在韓米軍撤退」

 米国が、北朝鮮が米国を直接攻撃するリスクを封じ込めたにもかかわらず、「完全な非核化」に関心を持ち続ける理由は、それが最終的に「在韓米軍の撤退」につながるからだ。「在韓米軍の撤退」は一見、覇権国家・米国の衰退を示すようにみえるがそうではない。むしろ、アメリカファーストが目指す方向性と一致したものである。

 アメリカファーストとは端的にいえば、米国が世界中の同盟国や新興国を安全に、豊かにする「世界の警察官」を辞めて、米国自身の「国益」を追求するということだ。これは、トランプ大統領の思い付きというレベルの話ではない。バラク・オバマ政権時に、シリアからの撤退を契機に始まった党派を超えた長期的な国家戦略である(第149回)。

 アメリカファーストの背景には、米国で生産されるシェール石油・ガスで米国が石油の輸入国から輸出国に変わる「シェール革命」がある(第170回・P.4)。米国が、中東などの石油・ガスに依存せず、独りでやっていけるということになった。現在では、米国が世界の石油・ガス市場を掌握し、サウジ、ロシア、イランなど従来の産油国を振り回すほどになっている。

 米国は、米国自身のことだけ考えればいいということになり、「世界の警察官」を辞めた。産油国が多数ある中東や、世界中の同盟国などの安全を保障することに関心をなくし、徐々に世界中に展開する米軍の撤退を始めているのだ。