もっとも、米国は「世界の警察官」を辞めたとはいえ、軍事力ではいまだに圧倒的な世界最強の座に君臨している。世界中の同盟国に軍隊を駐留させ続けているし、「世界の暴力団」として、気に入らない国があれば、国際秩序全体を考慮せずに、個別に介入する意欲は満々だ(第191回)。

「世界の暴力団」米国が現在、さまざまな国に揺さぶりをかけているのは、端的に言えば、「世界の警察官」時代に築いたさまざまな国々との間の距離感を「適切なもの」に再構築する取り組みである。その中で、米国にちょっかいを出しすぎていたロシアや中国は経済制裁を課させることになった。一方、サウジアラビア、イラン、トルコなど米国との距離感が広がった国もある(第201回)。

米国の「コスト」「リスク」
計算で考える「在韓米軍撤退」

 アメリカファーストによる他国との距離感の決め方の基準は、まず、米国の負う「コスト」と「リスク」を計算することである。韓国は、米国との距離が広がり、米国から関心を持たれなくなった国々の1つである。トランプ大統領は、1回目の米朝首脳会談で朝鮮半島が米国の「リスク」にならないことを確認した後、在韓米軍について「コスト削減になる」と将来的な撤退を示唆した。

「在韓米軍の撤退」自体は、オバマ政権期に決められており、米国の長期的な戦略であることはいうまでもない(第180回・P.5)。ただ、第2回の米朝首脳会談に「北朝鮮の完全な非核化」をテーマに臨むということは、「将来」ではなく今、現実的な課題としてテーブルに上げるということだろう。それでは、なぜ今なのだろうか。

 北朝鮮は米国の同盟国・韓国や日本にとって、今でも大きな「リスク」である。しかし、トランプ大統領は、大統領選の候補者だった時から「日本や韓国は、自分で自分の国を守れ」「日本は核武装すべきだ」と言っていた(第145回)。同盟国のリスクは、自分で自分の国を守ることで解消せよというのである。換言すれば、それは、「米国が撤退する代わりに、米国の武器を買え」ということだから、米国の「コスト削減」そのものになるということだ。

 そこで、「在韓米軍の撤退」がトランプ大統領の頭に浮上してくることになる。もちろん、「世界の暴力団」には、暴力団なりの大義名分が必要になる。そうでないと、単なる撤退ということになり、メンツが潰れてしまうからだ。その大義が、「朝鮮戦争の終結」である。