ビジネス的に成功を収めた人から、市井に生きる名もなき人まで、さまざまな分野にいる在日中国人を紹介するDOL特集『隣の中国人“ディープチャイニーズ”たちの肖像』。第10回からは、中国で日本風の鉄板焼き店をメインに、ラーメン店や寿司店など300店を超える飲食チェーンを展開する男の壮絶人生を紹介する。(ライター 根本直樹/取材協力『東方新報』)
パーティー会場で出会った
謎の“やから風”中国人
昨年の夏、お台場のホテルで開かれたあるパーティー。スーツ姿のビジネスマンたちで埋め尽くされていた会場で、ひときわ異彩を放っていた男がいた。龍の刺しゅうが入った“やから風”のラフなジーンズをはいた、坊主頭の“おっさん”。やけに目立つし、明らかに浮いている。一体何者なのか。
丁家順、49歳。実はこの男、中国最大規模の和食チェーン『大漁』グループの総帥で、中国の飲食業界では「伝説的な経営者」として知られる富豪でもある。
それにしてもなぜ日本に来ているのか。ビジネスなのか。あるいはカネ持ちの爆買いか。不動産でも買いあさりに来たのか。愛人との旅行か。興味を引かれて声をかけると、丁は人懐っこい笑顔を浮かべ、日本語で答えた。