私、死んじゃうかも!
突然の動悸に仰天した
(うわっ、電車来てる。急がないと)
孝子さん(仮名・28歳)は階段をかけおり、一番近いドアに飛び込んだ。
会社のある都心の駅までの所要時間は30分ほど。命の危険を感じるほどではないが、隣の人との間に隙間はなく、電車が揺れるたび、前の男性の背中にぎゅうっと体を押し当てなくてはならない程度には混んでいた。
10分弱走り、川を渡ると東京都に入り、そこから電車は地下鉄になる。車内の混雑は増し、圧迫されて息が苦しい。
(この電車は急行だから、次の停車駅までは、あと5~6分。お願い、これ以上混まないで)
祈ったその時だった。突然、心臓がドキドキし始めた。50メートルを全力で走った後のようでもあるし、肝試しで驚かされたときのようでもある。胸から今にも飛び出しそうに、心臓が大きく、早く、動いている。
(何、これ)
どっと汗が吹き出し、なんとも居たたまれない気持ちになる。呼吸も苦しい。
(あぁ、なんか耐えられない。降ろして、この電車から出して)
叫びだしたい衝動を抑えていると吐き気が襲ってきた。
(もうだめ、私、死んじゃうかも)