厚労省問題で振り返る、生活保護統計「怪しい信憑性」の歴史厚労省の統計不正問題が世間を揺るがせている。そこで気になるのが、生活保護に関する数値は大丈夫だろうか、というものだ。実際、これまでも信憑性が怪しい事例はあった(写真はイメージです) Photo:PIXTA

厚労省の統計不正問題で考える
「生活保護統計」は大丈夫か

 2004年以降に行われた不適切な勤労統計調査が明らかになり、1月22日には厚労省内で22人が処分された。原因は、COBOL言語で作成されたプログラムが厚労省職員によって改変されており、改変内容や結果のチェックがされていなかったことにあった。

かつて広く使用されていたCOBOL言語の技術者不足は、2000年前後から問題になり続けている。いずれにしても、体制の問題は、最新のプログラム言語や環境を導入しても解決しない。

 そうこうするうち、問題は厚労省内のみに留まらなくなってきた。総務省は1月24日、政府の基幹統計56種類のうち22種類に誤りがあったことを発表している。その中には、総務省の全国消費実態調査も含まれている。生活保護基準の決定は、5年に1回行われる全国消費実態調査の結果を参照して行われることになっている。

 生活保護に関する数値は、大丈夫だろうか。毎日のように生活保護関連の数値を眺めている筆者としては、「たぶん、あまり大丈夫じゃない」と即答せざるを得ないのだ。

 まずは、現在進行中の問題から見てみよう。

 生活保護で暮らす人々を2013年以来苦しめ続けているのは、“物価偽装”問題だ。具体的には2013年1月、厚労省が突如として発表した「生活扶助相当CPI」だ。「CPI」とは「Consumer Price Index」、すなわち物価指数のことだ。なお、“物価偽装”とは、この問題に最初に気づいた中日新聞記者(当時)・白井康彦氏の表現である。

 日本の消費者物価指数は、総務省によって計算されてきた。しかし厚労省は2013年、独自に「生活保護世帯にとっての物価指数」として、「生活扶助相当CPI」を作成して発表した。そして「約5%の物価下落が見られた」とし、これを理由として生活保護費の生活費分を平均6.5%削減した。しかしこの期間、実際に起こっていたのは物価上昇であった。