エボラ封じ込めが難しい北キブ州
「治安」と「住民の抵抗」が理由

 なぜ赤道州での流行と異なり、北キブ州では封じ込めがうまくいかないのか。そこには、2つの大きな理由がある。「治安」と「住民の抵抗」である。

 この地域は、紛争が長く継続しており、誘拐や反政府ゲリラの攻撃があることから、コンゴ民主共和国の保健省スタッフでさえも、移動に警察や軍の同行が必要な地域が多い。また、予防接種や治療を拒否する住民も多い。その理由は、この地域のこれまでの歴史と関係がありそうである。

 1994年、この地域の隣国のルワンダにおいて大虐殺(ジェノサイド)が起こったことは有名であり、『ホテル・ルワンダ』という映画をご覧になった方も多いだろう。大量の難民がルワンダから、この地域に逃げてきた。

 大規模なルワンダ難民キャンプがUNHCRにより運営されていた。しかし、1998年にはルワンダ政府軍およびウガンダ政府軍がコンゴ民主共和国内へ攻め入り、鉱山等の戦略拠点の攻撃・支配や難民キャンプ襲撃が行われ、ルワンダ難民だけではなく、周囲のコンゴ民主共和国の一般住民も多くが被害にあったという。

 この侵攻に対しコンゴ民政府はアンゴラ・ジンバブエとともに応戦し、複数の周辺国を巻き込んだコンゴ大戦へと発展する。この大戦が、この地域の治安に大きく影響している。

 この時、コンゴ民主共和国政府も国連機関も、有効な策を打ち出せず、市民の被害は甚大なものとなった。住民の多くが政府のみならず、国連機関にも不信を抱いているのである。政府や国連機関が中心となって実施している対策に対して、不信感を持ち、拒否する気持ちはよくわかる。