ダイヤモンド社刊 1890円(税込) |
「混乱の根は、利潤動機という私的な動機が企業活動の動機であり、基準であるとする考えにある。利潤動機なるものは、その存在さえ疑わしいというべきである。利潤動機とは、古典派経済学が経済行為を説明するために考え出した概念である」(『現代の経営』)
経済行為を理解するうえで利潤動機なるものは不要である。天使が社長でも利益は必要である。
利潤動機とそこから派生する利益最大化の概念は、事業の機能、目的、マネジメントとは無関係である。無関係であるよりも悪い。害を与える。利益の本質に対する社会の誤解と、利益に対する根強い反感の原因となっている。誤解や反感こそ産業社会にとっての病原菌である。
ドラッカーは、利益を目的とすることは誤りだと口を酸っぱくして言う。利益とは、世のため人のために、明日もっとよい事業をするための必要条件である。それは目的や目標よりもきつい条件である。実現できなければ存続さえ怪しくなるというものである。
未来について唯一確かなものは不確実性すなわちリスクである。リスクの語源が、アラビア語の「今日の糧を稼ぐ」であることは偶然ではない。
未来のリスクを賄うための利益、社会にとっての富の創出能力を維持するための利益を上げることは、企業にとって絶対の条件である。
「企業活動とは、つねに変化を起こそうとする経済活動である。それは、自分の座っている椅子の脚をのこぎりで挽くことに似ている」(『現代の経営』)