漁業の復興を願う被災地の生産者の思いはまたも打ち砕かれた。
震災前には国内有数のカツオの水揚げ港であった福島・小名浜漁港で、5月21日、今年初めてのカツオの水揚げが行われた。水揚げされたカツオは翌日、一部が東京の築地市場に卸された。
ものによっては最高値でカツオ1キログラム当たり2100円の値が付いたこの日、小名浜で水揚げされたものは同105円という“捨て値”しかつかなかった。
このカツオは、汚染が心配される福島沖で漁獲されたものではない。福島県から500キロ以上離れた八丈島沖で取れたものだ。静岡や千葉など他の漁港で水揚げされた、同じ水域で漁獲された同じカツオは、通常の価格で取引されている。まったくいわれのない、まさに風評による被害だ。
そもそも、小名浜機船底曳網漁業協同組合では、これらの遠くの水域で漁獲された魚に関しても、水揚げのたびに4回にわたる放射能検査を行ってきた。
「県から漁協に貸与されている、NaIシンチレーターという機械で1時間かけて測り、検出限界値10ベクレルまで計測できる体制を整えている。自前の検査だけでなく、いわき明星大学でも同じ方法で検査を行っている。さらに、より精密な検査が可能なゲルマニウム半導体検出装置での検査も、県の水産試験所と、北部太平洋まき網漁業協同組合連合会でそれぞれ行っている」と同漁協の前田久経理部次長は話す。
今回のカツオはこの4つの検査全てで放射性物質が不検出で、出荷された魚にはいわき明星大の行った「不検出」の検査結果が添付された。それにもかかわらず、築地では受け入れられなかった。