「毎朝痴漢される」
娘の告白に血の気が引く
娘の様子がおかしい。なんだか元気がない。笑顔は見せているものの、無理しているように見える。
「どうしたの、学校で何かあった」
加代子さん(仮名・43歳)は心配そうに尋ねた。
娘は私立大学付属高校の3年生。受験はしないが、志望の学部に進むには、学校の定期テストでいい成績を取らなくてはならず、今は大事な時期だった。
「うん、あのね」
重い口を開いた娘の話に、加代子さんは血の気が引いた。なんと、前学期の後半から、毎朝電車で痴漢に遭っているのだという。
「上下黒っぽいジャージにサンダル履きのおじさんで、体をぴったりと押し付けてきて、触られるの。乗り換えのM駅から乗車してきて、途中のN駅で降りていく。電車の時間をずらしても車両を変えても、気が付くと同じ車両に乗ってきて、くっついてくるの。完全に狙われていると思う。ものすごく気持ち悪いんだよ。休みが明けたら、もういなくなるかなって期待してたんだけど、だめだった。3日連続で触られた」
涙を浮かべ、震えながら打ち明ける。加代子さんは、汚らしい男の行為に、泣きそうな顔で耐えている娘の姿が目に見えるようだった。
(おとなしいと思って。清純なうちの娘になんてことを。絶対に許さない)
今度は怒りで体が震える。