(でもどうやって退治しようか。一緒に電車に乗って、襲ってきたところをとっつかまえて警察に突き出すか。反撃されたときのために武器がいるかしら。いや、私、娘のことになると凶暴化するから、殺しちゃうかもしれない。じゃあパパをボディガードにつけるのがいいかしら。いやいや、パパも凶暴化する可能性は高い。でも、殴り合いになったら負けちゃうかも。それに、その日にタイミングよく痴漢野郎が出ればいいけど、出なかったら、そいつが現れるまで何日間も会社を休むことになるよね)

 慌ただしく思考を巡らせた加代子さん、やはりここはプロフェッショナルに任せるのが一番という結論に達し、管轄の警察に電話した。

「娘が毎朝、電車で痴漢に遭っているというんです、どうしたらいいんでしょう」

 尋ねるとすぐに、担当の部署に電話が切り替わり、もう一度状況を説明すると、「これから署まで、お嬢さんと一緒に来られますか。対策を相談しましょう」と言ってもらえた。

「警察行こう、大丈夫。お母さんが絶対守ってあげる」

痴漢を逮捕しても
逆恨みが怖い

 それから30分も立たないうちに、母娘は警察署に到着した。受付で要件を告げ、階段をのぼると、俳優のムロツヨシ似の優しそうな私服警官が、階段の踊り場まで迎えに来てくれた。

「まずはお嬢さんに事情を伺いたいので、お母さんはあちらの部屋でちょっとお待ちいただけますか」

 同席して話をするつもり満々でいた加代子さんは、戸惑った。しかし、性犯罪の場合、被害者には母親には知られたくない事実も往々にしてあるらしい。心配でたまらない気持ちをぐっと抑え、待つことにした。

 それから20分。加代子さんは部屋に招き入れられた。

 机を挟み、先ほどの“ムロツヨシ”ともう1人、年配の警官と向き合って腰かけると、警官たちは今後のことについて話し始めた。