じわじわと縮小する市場の中、メーカーが巻き込まれる負のスパイラル──。そんな逆風下で、キビラが成功した要因はどこにあるのか。その最たるものは、あえてデザインを「ベーシック」なものに絞るという「捨てる勇気」を持っていたことにある。

「トレンドを意識したデザインの靴を売ろうとすると、どれが売れるか分からないから数をたくさん作りがちです。デザイン数を増やせば、デザインごと、サイズごとの数量を減らさざるを得ない。となれば、売れ残るデザインが出る一方で、人気のデザインは欠品が発生してしまいます」(福谷氏)。

 長く変化してこなかった靴の作り方が、業界の首を絞めている。だからこそ、福谷氏はそこにメスを入れた。

「創業当初から、定番商品に絞って販売しようと決めていました。キビラで最も売れているのはベーシックなパンプス。しかも、約50%は黒が選ばれています。スタイリストさんに話を聞いても、『服を決めてから合う靴を探す』と言いますから、靴が主張したらダメなんですよね。むしろ、いかに定番の質を高めるかのほうが重要なんです」(福谷氏)

オーダーで1足9900円は
どうやって実現したのか

 キビラの靴が人気となった背景には、自分の足に合わない靴に悩む女性が非常に多いという現状がある。福谷氏があえてオーダーシューズブランドで靴業界に参入したのも、女性社員が口をそろえて「自分に合う靴を作って販売したい」と熱望したからだという。

 ブランド設立にあたって、オーダーメードにもかかわらず1足9900円という手ごろな価格設定にしたのは、福谷氏のこだわりだった。

「安くなければ大衆化できませんから、最初からマスマーケットで勝負できる価格設定にしようと決めていました。アンケート調査の結果、20~40代女性の約半数以上が年間5000円以上、靴の購入に使っていることが分かっています。その結果をもとに、分かりやすくて多くの人が買い求めやすい1万円以下に決めました」(福谷氏)