3年前に新設された広島市民球場に、構造上の欠陥が懸念されている(週刊ダイヤモンド2012年5月19日号で既報)。広島市の元幹部の木原康男さんが、知人の1級建築士と広島市民球場の構造計算書などを分析し、柱や耐力壁の下に杭が打たれていない箇所が多数あることを発見したものだ。
木原さんらの質問状に対し、広島市は3月、「最新の研究に基づく合理的な設計」で「安全性に問題はない」と回答したが、それを裏付ける具体的なデータは示されなかった。このため、木原さんらは5月に再度、質問状を提出し、「球場1階部分の床スラブと基礎梁の自重が除外されて構造設計されている」と、問題点を具体的に提示した。本来、算入すべき自重を除いたことなどにより、打つべき杭が省かれたのではという指摘だ。
広島市は5月25日に2次回答を寄せたが、またしても具体性に乏しいものだった。
床スラブの自重に関しては「直接地盤と接しているため、土によって十分に支えられるものとなっており、かつ、構造的にみても基礎梁への荷重の伝達はないことから、床スラブの自重を計上する必要がない」としている。基礎梁の自重についても「直下の土によって十分に支えられるものとなっており、かつ、基礎地盤が将来にわたり圧密沈下をしない過圧密状態にあることから、計上する必要がない」としている。だが、実際の地盤は「地震時には液状化する可能性が高い」(構造計算書の記述)。
「回答になっていません。こちらは技術的な根拠を聞いているのに市はそれを何ら示していません」と木原さん。「第三者によるチェックが不可欠ではないか」と訴える。
(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 相川俊英)