もちろん、繰り上げ返済をしようとすれば、銀行はイヤな顔をします。イヤな顔をするのは、銀行の担当者です。繰り上げ返済は、銀行員にとってマイナスポイントになります。銀行担当者がイヤな顔をするのは当然なのです。

 しかし、そんなことは銀行にかかわらず、どの業界でも同じです。

 材料の仕入業者でも、よそに変えると言ったら、「ハイ、喜んで!」とは答えてくれません。イヤな顔もすれば、抵抗もします。当たり前のことです。それでも、必要ならば、業者を変えます。

「イヤな顔をされるから、やめておこう」などとは誰も思いません。

銀行が強い時代は
もう終わった

 それに、銀行を取り巻く環境は、かつての貸す側が強い時代とはまったく逆になっています。そのことを知らずに、アドバイスをする税理士がいるなら、それは単なるミスリードです。

 昨今の銀行交渉の要点について、会計事務所の人は詳しくありません。というよりも、銀行交渉のことなど知らないのです。銀行借入などしたことがない税理士がほとんどなのですから。

 今どき、繰り上げ返済をしたから、次は借りられないといった話は聞いたことがありません。銀行担当者も、転勤でコロコロ代わります。財務状況がよい会社なら、過去に繰り上げ返済があろうと、また借りてほしいと思っています。

 ミスリードをするような会計事務所に翻弄されないように、経営者自身が経営のトレンドを学び続けていくしかありません。