新刊『借りたら返すな! いちばん得する! 儲かる会社に変わるお金の借り方・残し方』では、1000件以上の財務戦略を立案してきた著者による「お金の調達力」を上げるための方法を紹介しています。本書から、「お金と会社の関係」「銀行との正しい付き合い方」「節税対策のウソ・ホント」「お金で困っている企業が意外と知らない対策」「企業再生で成功したノウハウ」などを公開します。

会社を守るのは「利益」ではなく、「現預金」です

 会社を起業したり、出世して経営をまかされたり、社長になる人は、儲けることを考えて経営の舵をとっていきます。しかし残念ながら、多くの会社が儲かる以前に、廃業へと追い込まれます。

 どうすれば会社を潰さずに、儲かる会社に変えることができるのか。

 答えはただ一つ。会社に「お金」があればいい、それだけです。お金がないから会社は潰れていくのです。お金がないから十分な投資ができず、儲けることができないのです。

 私は、コンサルティング会社で企業再生案件を相当数、経験しました。企業再生というと、企業を復活させるかっこいい仕事のようなイメージを持つ方が多いのですが、現場で見たのは、日々の資金繰りに追われ、銀行に追い立てられ、夜も眠れない社長たち……。精神的に追い込まれて自殺してしまった社長もいました。

 実際のところ、企業再生案件として、私たちのところにくる段階では、自力での再生は困難なケースが多いです。

 理由は「お金」がないからです。お金がなければ借りればいいのですが、企業再生のフェーズに入ってしまうと新規にお金を借りるのは非常に難しくなっています。

「銀行は晴れの日に傘を貸し、雨の日に傘を奪う」

 まさにそのとおりです。借入ができないので、資産売却やリスケジュール(返済猶予)、コスト削減、いわゆるリストラなどをして、なるべくお金を減らさない施策を実行するのですが、再生する時間が稼げないケースが多数あります。

「なぜもっと早く相談してくれなかったんだ……」

 順調な時期にきちんとした財務戦略を立てていればここまで追い込まれることはなかったんじゃないか、という案件も多くありました。

 社長に聞くと「お金のことは顧問税理士に任せていたので……」とよく言われました。

 実際に、顧問税理士同席で打ち合わせをすることもありましたが、まったく財務のことが分かっていない方が多く、「こんな状態になる前なら何とかなったのに……」と何度も悔しい思いをしました。

「経営者にお金を任せられている」という認識のない税理士と、「税理士は財務を分かっている」と勘違いしている経営者のギャップは、中小企業にとって大きな問題です。税理士は過去の会計と税務の専門家であってお金の専門家ではないのです。

 会計は過去の取引を整理しているだけです。