JR東海、JR東日本が開発中の新幹線新型車両。JR東の「ALFA-X」は、22メートルものロングノーズを持つ先頭車両が特徴的だ。元祖である「0系」の丸い鼻からスタートした新幹線の顔は、なぜ変化し続けるのだろうか。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
絶えず進化する新幹線の「顔」
22mのロングノーズ車両も登場!
JR東海は1月、東海道新幹線の新型車両「N700S」の営業運転を2020年7月から開始すると発表した。既に昨年から量産先行車による走行試験が日中に行われているが、よほど鉄道ファンでもない限り、一見しただけでそれが次世代車両だとは気づかないだろう。
新幹線はこれまで、モデルチェンジのたびに先頭車両の形状を変えてきた。その歴史をふまえるとN700Sの外見は現行のN700系とほとんど変わりないように映るかもしれないが、N700Sの前頭部は従来型よりも空気抵抗や騒音を低減するために、左右両サイドのエッジを立たせた「デュアルスプリームウィング形」の形状を採用している。同じ角度の写真を見比べればようやく分かるくらいの変化だが、着実に進化を遂げているのだ(内装など快適性の部分やメカニズムは大きく刷新されている)。
一方JR東日本は、今年5月に次世代新幹線開発用試験車両E956形「ALFA-X(アルファエックス)」を完成させ、東北新幹線における時速360キロ運転の実現に向けた走行試験を開始する。性能比較のため両端の先頭車両(1号車と10号車)は異なる形状をしており、特に10号車は車両の大部分を占める約22メートルのロングノーズが特徴的だ。
なぜ新幹線の「顔」は絶えず変化し続けるのか。それは新幹線の速度向上の歴史が空気との戦いだったからである。
新幹線の最高速度は、1964年に開業した東海道新幹線の時速210キロから約20年間引き上げられなかった。1981年に開業したフランスの高速鉄道「TGV」が時速260キロ運転をしたことや、国内航空網の整備拡充を受けて、国鉄は新幹線の速度向上に取り組むことになるが、実はこの間、手をこまねいていたわけではない。
国鉄は東海道新幹線の開業後すぐに、将来的な時速260キロ運転に向けた技術開発に着手しており、その一部は1972年に開業した山陽新幹線に反映されている。しかし、折しも成長一辺倒から生活環境への関心が高まる時代への転換期で、運転本数の増加に伴う沿線の騒音や振動が「新幹線公害」として社会問題になってしまった。
騒音問題は速度が上がるほど影響が大きくなることから、新幹線は騒音対策を強化しない限り、スピードアップすることができなくなってしまったのだ。