消防隊はすぐさま2線のホースを延長して1階に向け放水を開始。2階に逃げ遅れ要救助者ありの報告からすみやかにチタン製3連はしごを2階窓に架けた。地元消防団も到着して中隊長の指示により団員がはしごの内側へ回り込み3点支持にてはしごを保持する。消防団の可搬ポンプからもホース1線を延長し噴霧放水にてレスキュー隊員を熱から防護するため援護放水を行う。レスキュー隊員の吉野が2階の窓から侵入し室内を検索すると奥のドア付近でうつぶせに倒れている要救助者を発見。無線で指揮本部に報告と同時に要救助者を窓まで引っ張る。

 続いてはしごを昇ったレスキュー隊員の神谷が要救助者を吉野から受け取り肩に担いではしごを降りる。その時2階でも充満した煙ガスに引火して再度のフラッシュオーバーが発生した。

 先に2階から飛び降りた奥さんは救急搬送の結果一命は取り留めたが、骨盤骨折と足首の複雑骨折さらに煙を大量に吸ったことによる気道熱傷で重体。ただし体のどの部分も火傷は負っていない。気道がただれている原因は有毒な酸性ガスによる熱傷と判断された。2階からの脱出で重傷を負うなど誰も想定していなかった。煙を吸引したことにより呼吸ができずにパニックに陥ったと考えられる。

 救助された熊さんは救急搬送の段階で救急隊と病院医師側の電話による相談の結果、高圧酸素療法の加療が必要で、都内の施設を探したが空きがない。都内から江戸川河川敷まで救急車で搬送して、野球グランドで待機手配した消防ヘリコプターに移し替え千葉県鴨川市の亀田総合病院へ移送し救急救命センターで高圧酸素カプセルに収容された。外傷は全く無く、火傷の跡すらもなかった。

 2階でのフラッシュオーバーの後猛烈な勢いで家屋全体が炎に包まれて全焼した。

 残念なことにレスキュー隊員の吉野が殉職してしまった。神谷は思った。要救助者が自力で動けたらはしごをかけた段階で自力避難できたはずだ、この数十秒足らずの時間差で吉野が死なずに済んだのに。悔しさ無念さを噛み締めた。

 その三週間後高圧酸素治療の加療の結果、一命は取り留めた熊さんは脳死状態となったとの報告を神谷は聞いた。吉野が犠牲を払って救助したのに。火災で少しの火傷も負っていないのに植物状態とは。無念。

 以上 最悪のシミュレーションでした。
(実火災実験や実際にありましたヘリでの移送、高圧酸素加療、実際の火災事例を参照したシミュレーションです)