PLとBSPhoto:PIXTA

ビジネススキルの基礎ともいえるPL(損益計算書)の理解。筆者は複数のスタートアップ企業でCFO(最高財務責任者)を兼務していることもあり、スタートアップの役職員などと接触することが少なくないのだが、彼らと企業の財務に関わる話をしていると、PLに比べてBS(貸借対照表)の理解が浅いことが散見される。ふと自身を振り返ると、BSの見方や捉え方を学んだのは運用会社で株式アナリストを経験していた時であって、それまでの教育課程では一切学ぶ機会はなかった。そこで、筆者のライフワークである子ども向け金融教育の一環として、「会社ごっこ」をすることで、子どもだけでなく大人もPLとBSの両方を理解できるリテラシーを身に付けていくことを提案したい。(株式会社マネネ 代表取締役社長CEO 森永康平)

売上高が伸びているから何?という視点

 ビジネスパーソンや起業をしたい学生が集まる懇親会などに参加すると、よく経営者同士の会話で年商がいくらだという話をしている場面に遭遇する。それだけを聞いて「すごい」という感想を述べる人を見かけるが、年商の規模は1つの指標にすぎず、それだけでは会社の価値を評価するための指標としてはあまりに頼りない。年商、つまり売上高が多いことはその企業の事業規模を知る上では重要ではあるものの、採算を度外視すれば売上高を作ることは可能であり、それ単体だけでは企業の価値は判断できない。

 企業にとって重要なのは、いかに利益を稼ぎ出すかということであり、売上高だけを見ることにはあまり意味がない。売上高からあらゆるコストを差し引いて、どれだけの利益を残すことができるのかが、企業にとっても、その企業の株主にとっても非常に重要なことである。

 当然、コストといっても原価と人件費は別に考えるべきで、売上高から原価を引き、売上総利益(粗利益)を算出し、そこから人件費を引いて営業利益を算出するなど、細かい話をしだすとキリはないのだが、まずは売上高からコストを引いても利益が残ることが重要だということを理解した上で、その利益をいかに伸ばしていくのかが企業に求められることだという認識を持つべきだろう。