「論理に裏打ちされた戦略があってこそ、成功にたどりつける」――これがかつてのビジネスの常識だった。しかし「他者モードの戦略」は、いたるところで機能不全を起こしつつある。その背後で、いま、マーケットに強烈なインパクトを与えているのは、「根拠のない妄想・直感」を見事に手なずけた人たちだ。
そんななか、最新刊『直感と論理をつなぐ思考法――VISION DRIVEN』を著した佐宗邦威氏は、いま何を考えているのか? P&G、ソニーで活躍し、米国デザインスクールで学んだ最注目の「戦略デザイナー」が語る「感性ベースの思考法」の決定版!!

「これはただの妄想だけど……」
という言葉の裏にあるもの

50歳過ぎまで会社員をしていた人が、いきなり「私はこれから映画監督になって世間をアッと言わせたいんだ!」と言いはじめれば、面と向かってではないにしても、周囲の人たちは眉をひそめることだろう。なかには、陰で嘲笑する人もいるかもしれない。

しかし、同じ人が「これは僕の単なる妄想だけど、いつか映画監督になって世間をアッと言わせたいんだ」と言えば、おそらくそのような事態は回避できる。

「実現しようもないアイデア」としてのニュアンスがある「妄想」という単語は、日常会話におけるある種の「予防線」として機能しているのだ。

子どもが「宇宙飛行士になりたい」と言えば、「夢のある子だな」と評価されるが、ある程度の年齢になってからそうした夢を語ると、「いい年をした大人が、何を言っているんだ」という顔をされる。