「論理に裏打ちされた戦略があってこそ、成功にたどりつける」――これがかつてのビジネスの常識だった。しかし「他者モードの戦略」は、いたるところで機能不全を起こしつつある。その背後で、いま、マーケットに強烈なインパクトを与えているのは、「根拠のない妄想・直感」を見事に手なずけた人たちだ。
そんななか、最新刊『直感と論理をつなぐ思考法――VISION DRIVEN』を著した佐宗邦威氏は、いま何を考えているのか? P&G、ソニーで活躍し、米国デザインスクールで学んだ最注目の「戦略デザイナー」が語る「感性ベースの思考法」の決定版!!
「コミュニケーション上手」がゆえの弊害
「最近、『本当にやりたいこと』がわからなくなってきて……」
とある友人から、そんな相談を受けたことがある。
大手企業で新規事業のリーダーとして活躍する彼女は、チームにいてくれるだけで不思議とプロジェクトがうまく回る「天才的コミュニケーター」だ。新たに事業を立ち上げるようなときには、こういう人の存在が欠かせない。
そんな彼女がこぼしていたのが、「仕事はうまくいっているけれど、なんとなくモヤモヤする。でも、どこに不満があるのかもよくわからない」という悩みだった。
彼女の問題は「コミュニケーションがうますぎること」なのではないか――僕にはそう思えた。
周りの期待に応えて、他者ばかりに思考リソースを振り向けているうちに、彼女は「自分モード」への切り替えスイッチを見失ってしまったのだ。